世界で最も売れた2枚組ゴスペルLP『Amazing Grace』と、Stevie Wonder 提供曲などを含む大ヒット作『Let Me In Your Life』にはさまれ、どうも存在感が薄くなっているアルバム。アレサ自身がデザインを担当したジャケットも、なんか意味深すぎる(ジャケットをひっくり返しても、アレサが浮かんでで来る仕掛け)。その一方で、前作に引き続きダブルジャケットを採用しており、豪華さは感じます。でも、終始イラストばかりなので、実験的ではあったものの、なんか微妙かな。
総合プロデューサーに、Quincy Jones…今までは、絶対的にJerry Wexler, Tom Dowd, Arif Mardin の3者だっただけに、アレサにとって何らかの意識が変わり始めていた頃と思って良いだろう。これまでも、アレサは自身のアイディアでゴスペルアルバムを発表しただけではなく、プロデューサーの意図で『Soul '69』『Live at Fillmore West』を発表しているが、これはまったくもって趣旨が異なる。もともとジャズアルバムを完成させるために、クインシーを招いたのだが、やはりそれだけでは物足りなくなってしまったというか、クインシーのやり方に満足がいかなくなってしまったとも読み取れる。
それは、アルバム収録曲以外に録音された別テイク・未発表曲からも読み取れる。一番分かりやすいのが2006年に蔵出しされた『Rare & Unreleased Recordings』からも分かる。ありえないくらいに未発表曲が多いのだ!大きくわけて4回にわたりレコーディングが行われており(1972年4月28日 / 1972年5月5日 / 1972年9月1日 / 1972年9月5日)、未発表曲集に収録されたお蔵入り楽曲は8曲もあったのですが、さらなる未発表曲が8曲もあったようなのです(斜めライン参照)!!おそらく、今からでもDeluxe Edition とか作れちゃうのではないでしょうか?(笑)
特に、実際のオリジナルアルバムに収録された9曲のうち、6曲が最初のレコーディング日に録音されたもの。その後も、アレサの意向で何度もレコーディングを行っているのだが、そのほとんどが採用されず終わってしまっているのが分かる。しかし3回目のレコーディングで、「That's The Way I Feel About Cha」のレコーディングが実施されたことで、なんとかレコーディングは終了することとなったようだ。
April 28th, 1972
(The Record Plant, Loa Angeles. Prod. by Quincy Jones & Aretha Franklin)
24389 Moody's Mood 45-2941, LP-7265
24390 Somewhere LP-7265
24391 Something Stupid (Unreleased)
24392 Hey Now Hey (The Other Side Of The Sky) LP-7265
24393 The Boy from Bombay (Unreleased)
24394 Sweetest Smiles & Funkiest Style (Unreleased)
24395 After Hours (sub: Just Right Tonight) (Unreleased ver.)
24396 This Is (Unreleased)
24397 Tree of Life (Unreleased)
24398 Mister Spain LP-7265
24399 So Swell When You're Well LP-7265
24400 Angel LP-7265, 18204
May 5th, 1972:
(The Record Plant, Los Angeles. As above)
24401 After Hours (Just Right Tonight) LP-7265
24402 Do You Know (Unreleased)
24403 Can You Love Again (Unreleased)
24404 I Want Be With You (Unreleased)
24405 Somewhere (Unreleased ver.)
24406 Suzanne (Unreleased)
September 1st, 1972
(The Record Plant, Loa Angeles. Prod. by Quincy Jones & Aretha Franklin)
25235 Sister from Texas 45-2969, LP-7265
25236 C.C.C. (Unreleased)
25237 Listen To The Melody (Unreleased)
25238 After Hours (Just Right Tonight) (Unreleased ver.)
25239 Master of Eyes (The Deepness Of Your Eyes) 45-2941
25240 That's The Way I Feel About Cha LP-7265
September 5th, 1972:
(No other information)
25270 That's The Way I Feel About Cha (Single Version) (Unreleased)
※3回目のレコーディングで本来は終わったと思いきや、4回目のレコーディングを実施…曰くの曲の別テイクを吹き込んだようだが、実態は不明。残念ながら、こちらもお蔵入りのまま
1.「Hey Now Hey (The Other Side of the Sky)」
アレサ自作、出だしは暗いものの、蓋をあけると絶えず明るいメロディ・アレンジ…ただし時折、ストーリー仕立てでブレイクされる低音・コーラスは不思議な空間演出となっている
2.「Somewhere」
“West Side Story”より。アルバムの最初のほうで、ここまでしっとりとした楽曲を持ってくるのは意外な感じ!6分以上もあるが、途中アレサがジャズを楽しむかの如く、ピアノを2分ほど披露…途中サックスも加わるが、やはりピアノの存在感は大きい。ヴォーカリストでありつつも、ピアニストアレサというのを改めて知らしめてくれるようだ(1996年には『West Side Story』なるコンピにて再録音した)
3.「So Swell When You're Well」
アレサ自作で、ジャズというかドロ臭さが印象的。徐々にアレサのピアノも軽快にはね、ミディアムスローの楽曲がたちまち輝きを増してくる
4.「Angel」
13曲目となるR&B1位!アルバムからの唯一のシングルで、POPでも20位まで上昇した。妹のCarolyn Franklin 作、アレサからもソウルファンからも愛される名曲として今尚親しまれ続けている。宙に上っていくかのようなメロディ、後半のストリングスとの融合…どれも無理なく個性を発揮していて、凛とした表情の楽曲だ。シングル用に1分程エディットされたヴァージョンも一部コンピにCD化されている。余談ですが、2003年には「Angel (※part.2)」という同名異曲を『Songs for Life』というコンピの中でK-Ci & Jojo とデュエットしています
5.「Sister from Texas」
「Angel」のカップリングナンバー…3分少々と短いが、1曲目以上に明るく、シングル候補にもなりうる楽曲だ
6.「Mister Spain」
70年代後期に増えていく、派手な衣装を着て、TVなどでも披露されたことのある楽曲…シリアスなスタートかと思えば、後半はフルートがさえずり亘り、超高音パンチで押し通したり、声を意図的に震わせながら楽しげに歌うアレサがいたり…これも長尺6分半、スケールが大きいです
7.「That's the Way I Feel About Cha」
近年蔵出しされた1972年『Live in Philly』でも披露・収録されていたBobby Womack の名曲…この曲を録音できたからこそ、アレサはこのアルバムのレコーディングを終了したようですが、その一方で別途録られた未発表のシングルヴァージョンも想像が膨らみます(実際はシングルにはならずじまい)。アレサは原曲とは異なる解釈で、ソウルフィーリングでシャウトしまくってます。薄口の音の中、アレサの流れるような高域のヴォーカルが、けたたましく響きます
8.「Moody's Mood」
これは先行シングル「Angel」の前に発表されていた シングル「Masters〜」のカップリングにも収められていた。かなりテンポの良いご機嫌スキャットばりな展開…James Moody で有名なナンバー。アレサの絶品・歯切れの良いヴォーカルに、新たな魅力を見いだせる
9.「Just Right Tonight」
別題「After Hours」としてレコーディングされていたナンバー…ピアノはBilly Preston、3分半ほどしてようやく歌がスタート…けだるい曲調とも取れるが、アレサのジャズ的魅力をしっかり汲める壮大なアレンジに注目です!8分近く、緩やかなヴォーカル中に秘める技巧には、多くの凄みが溢れているのが分かるはず!
10.「Master of Eyes (The Deepness of Your Eyes)」
※1994年のCD化に伴い追加収録。元々、この曲は当時のグラミー賞受賞楽曲でもあったので収録しても良かったと思いますが、アルバム上、1曲1曲にこだわりがあったのでしょう。
全9曲・約48分(ボートラを入れて51分少々)。全体的に、ジャズナンバーとソウルナンバーが程良く並べられており、じっくりと流れを楽しめると思います!シングル曲が少ないため派手さはないかもしれませんが、それでもアレサの魅力は十分に詰まってます!!
※2006年には日本のVivid より再発されました(紙ジャケ・ダブルジャケット仕様)!…しかしながら、1993年以来リマスターが進んでいないので、また音が良くなってパワーアップしてもらえると嬉しいです。
Hey Now Hey (The Other Side of the Sky)
アーティスト:Aretha Franklin
販売元:WEA International
発売日:2005-12-20
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ヘイ・ナウ・ヘイ(ジ・アザー・サイド・オブ・ザ・スカイ)(紙ジャケット仕様)
アーティスト:アレサ・フランクリン
販売元:ヴィヴィッド
発売日:2006-06-21
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総合プロデューサーに、Quincy Jones…今までは、絶対的にJerry Wexler, Tom Dowd, Arif Mardin の3者だっただけに、アレサにとって何らかの意識が変わり始めていた頃と思って良いだろう。これまでも、アレサは自身のアイディアでゴスペルアルバムを発表しただけではなく、プロデューサーの意図で『Soul '69』『Live at Fillmore West』を発表しているが、これはまったくもって趣旨が異なる。もともとジャズアルバムを完成させるために、クインシーを招いたのだが、やはりそれだけでは物足りなくなってしまったというか、クインシーのやり方に満足がいかなくなってしまったとも読み取れる。
それは、アルバム収録曲以外に録音された別テイク・未発表曲からも読み取れる。一番分かりやすいのが2006年に蔵出しされた『Rare & Unreleased Recordings』からも分かる。ありえないくらいに未発表曲が多いのだ!大きくわけて4回にわたりレコーディングが行われており(1972年4月28日 / 1972年5月5日 / 1972年9月1日 / 1972年9月5日)、未発表曲集に収録されたお蔵入り楽曲は8曲もあったのですが、さらなる未発表曲が8曲もあったようなのです(斜めライン参照)!!おそらく、今からでもDeluxe Edition とか作れちゃうのではないでしょうか?(笑)
特に、実際のオリジナルアルバムに収録された9曲のうち、6曲が最初のレコーディング日に録音されたもの。その後も、アレサの意向で何度もレコーディングを行っているのだが、そのほとんどが採用されず終わってしまっているのが分かる。しかし3回目のレコーディングで、「That's The Way I Feel About Cha」のレコーディングが実施されたことで、なんとかレコーディングは終了することとなったようだ。
April 28th, 1972
(The Record Plant, Loa Angeles. Prod. by Quincy Jones & Aretha Franklin)
24389 Moody's Mood 45-2941, LP-7265
24390 Somewhere LP-7265
24391 Something Stupid (Unreleased)
24392 Hey Now Hey (The Other Side Of The Sky) LP-7265
24393 The Boy from Bombay (Unreleased)
24394 Sweetest Smiles & Funkiest Style (Unreleased)
24395 After Hours (sub: Just Right Tonight) (Unreleased ver.)
24396 This Is (Unreleased)
24397 Tree of Life (Unreleased)
24398 Mister Spain LP-7265
24399 So Swell When You're Well LP-7265
24400 Angel LP-7265, 18204
May 5th, 1972:
(The Record Plant, Los Angeles. As above)
24401 After Hours (Just Right Tonight) LP-7265
24402 Do You Know (Unreleased)
24403 Can You Love Again (Unreleased)
24404 I Want Be With You (Unreleased)
24405 Somewhere (Unreleased ver.)
24406 Suzanne (Unreleased)
September 1st, 1972
(The Record Plant, Loa Angeles. Prod. by Quincy Jones & Aretha Franklin)
25235 Sister from Texas 45-2969, LP-7265
25236 C.C.C. (Unreleased)
25237 Listen To The Melody (Unreleased)
25238 After Hours (Just Right Tonight) (Unreleased ver.)
25239 Master of Eyes (The Deepness Of Your Eyes) 45-2941
25240 That's The Way I Feel About Cha LP-7265
September 5th, 1972:
(No other information)
25270 That's The Way I Feel About Cha (Single Version) (Unreleased)
※3回目のレコーディングで本来は終わったと思いきや、4回目のレコーディングを実施…曰くの曲の別テイクを吹き込んだようだが、実態は不明。残念ながら、こちらもお蔵入りのまま
1.「Hey Now Hey (The Other Side of the Sky)」
アレサ自作、出だしは暗いものの、蓋をあけると絶えず明るいメロディ・アレンジ…ただし時折、ストーリー仕立てでブレイクされる低音・コーラスは不思議な空間演出となっている
2.「Somewhere」
“West Side Story”より。アルバムの最初のほうで、ここまでしっとりとした楽曲を持ってくるのは意外な感じ!6分以上もあるが、途中アレサがジャズを楽しむかの如く、ピアノを2分ほど披露…途中サックスも加わるが、やはりピアノの存在感は大きい。ヴォーカリストでありつつも、ピアニストアレサというのを改めて知らしめてくれるようだ(1996年には『West Side Story』なるコンピにて再録音した)
3.「So Swell When You're Well」
アレサ自作で、ジャズというかドロ臭さが印象的。徐々にアレサのピアノも軽快にはね、ミディアムスローの楽曲がたちまち輝きを増してくる
4.「Angel」
13曲目となるR&B1位!アルバムからの唯一のシングルで、POPでも20位まで上昇した。妹のCarolyn Franklin 作、アレサからもソウルファンからも愛される名曲として今尚親しまれ続けている。宙に上っていくかのようなメロディ、後半のストリングスとの融合…どれも無理なく個性を発揮していて、凛とした表情の楽曲だ。シングル用に1分程エディットされたヴァージョンも一部コンピにCD化されている。余談ですが、2003年には「Angel (※part.2)」という同名異曲を『Songs for Life』というコンピの中でK-Ci & Jojo とデュエットしています
5.「Sister from Texas」
「Angel」のカップリングナンバー…3分少々と短いが、1曲目以上に明るく、シングル候補にもなりうる楽曲だ
6.「Mister Spain」
70年代後期に増えていく、派手な衣装を着て、TVなどでも披露されたことのある楽曲…シリアスなスタートかと思えば、後半はフルートがさえずり亘り、超高音パンチで押し通したり、声を意図的に震わせながら楽しげに歌うアレサがいたり…これも長尺6分半、スケールが大きいです
7.「That's the Way I Feel About Cha」
近年蔵出しされた1972年『Live in Philly』でも披露・収録されていたBobby Womack の名曲…この曲を録音できたからこそ、アレサはこのアルバムのレコーディングを終了したようですが、その一方で別途録られた未発表のシングルヴァージョンも想像が膨らみます(実際はシングルにはならずじまい)。アレサは原曲とは異なる解釈で、ソウルフィーリングでシャウトしまくってます。薄口の音の中、アレサの流れるような高域のヴォーカルが、けたたましく響きます
8.「Moody's Mood」
これは先行シングル「Angel」の前に発表されていた シングル「Masters〜」のカップリングにも収められていた。かなりテンポの良いご機嫌スキャットばりな展開…James Moody で有名なナンバー。アレサの絶品・歯切れの良いヴォーカルに、新たな魅力を見いだせる
9.「Just Right Tonight」
別題「After Hours」としてレコーディングされていたナンバー…ピアノはBilly Preston、3分半ほどしてようやく歌がスタート…けだるい曲調とも取れるが、アレサのジャズ的魅力をしっかり汲める壮大なアレンジに注目です!8分近く、緩やかなヴォーカル中に秘める技巧には、多くの凄みが溢れているのが分かるはず!
10.「Master of Eyes (The Deepness of Your Eyes)」
※1994年のCD化に伴い追加収録。元々、この曲は当時のグラミー賞受賞楽曲でもあったので収録しても良かったと思いますが、アルバム上、1曲1曲にこだわりがあったのでしょう。
全9曲・約48分(ボートラを入れて51分少々)。全体的に、ジャズナンバーとソウルナンバーが程良く並べられており、じっくりと流れを楽しめると思います!シングル曲が少ないため派手さはないかもしれませんが、それでもアレサの魅力は十分に詰まってます!!
※2006年には日本のVivid より再発されました(紙ジャケ・ダブルジャケット仕様)!…しかしながら、1993年以来リマスターが進んでいないので、また音が良くなってパワーアップしてもらえると嬉しいです。

アーティスト:Aretha Franklin
販売元:WEA International
発売日:2005-12-20
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アーティスト:アレサ・フランクリン
販売元:ヴィヴィッド
発売日:2006-06-21
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