アレサがアトランティックレーベルに移籍して5年…次々とポピュラーソングでヒットを飛ばしていたアレサだったけど、基はゴスペル出身。これまでソウルミュージックを通して与え続けてきた影響を維持しながら、彼女の原点である教会へと戻ってきてくれました。おそらく、当時のレコード会社の面々は、ゴスペル回帰は致し方ないと判断したのかもしれませんが、アレサにとってはどうしてもリリースしたかった作品だったに違いありません。

2枚組LPでリリースされ、全14曲・86分半に亘り収録されています。本来のライヴの流れに沿っては収録せず、2LPにこだわり(分数もだいぶ限られる)、アレンジャーのArif Mardin が相当な手腕を活かして、ライヴとは異なる作品として完全に仕立て上げています。もちろん、アレサとの協議もあっただろうけど、プロデューサーJerry Wexler の采配があってこそ完成した作品と言えるんだろうなぁ。

*:1日目(1972年1月13日)
+:2日目(1972年1月14日)
#:両日(追加レコーディング有り)

Disc.1
1.「Mary Don't You Weep(マリアよ泣くなかれ)」+
オープニングは徐々に熱を帯びるナンバー。決して派手さはないけど、クワイアと共に魂で付きぬけていく力量が詰まってます。アレサは“VH1 Divas Live 2001 (Tribute to Aretha Franklin)”でも披露していたことから、ゴスペル曲の中でも相当大事にしている楽曲なんだと思います
2.「Precious Lord (Take My Hand) / You've Got a Friend [Medley](尊き主よ我が手を / きみの友だち)」*
ゴスペルではお馴染みの曲と、Carole King のヒット曲を繋ぎ合わせたメドレー。本来、こういう趣向は除外したかったと思うけど、あまりに黒いライヴになってしまうと、アレサが獲得した幅広いリスナーに対して懸念材料が増えてしまうことから、配慮されての選曲となったのでしょうね。ただし後者の楽曲は「You Make Me Feel Like (A Natural Woman)」の作者ともあって、なんとか歌われたのかな。実際に聴いてみると、アレサならではのアレンジ力でゴスペル化させてしまったのが凄い・・・
3.「Old Landmark」*
BPMが激しい!アレサの迫力・高音、それにつられて盛り上がるクワイア…教会の厚さを感じ取れる1曲
4.「Give Yourself to Jesus(イエスに我がすべてを)」*
1日目のラストに披露された楽曲、しっとりと魂をこめて歌うアレサに酔います
5.「How I Got Over」*
今尚アレサが気に入っているゴスペル曲、テンポが良く。さらには歌い回しにはR&Bに近い部分も感じ取れ、幅広いファン層に受け入れやすいのではないでしょうか
6.「What a Friend We Have in Jesus(いつくしみ深き友なるイエス)」*
これはサザンサウルに近い、アレサとのルーツの境目を感じさせるミドルテンポの楽曲
7.「Amazing Grace(至上の愛)」*
タイトル曲に選ばれたゴスペル曲、10分以上の熱演で、ほぼアドリブで進行するような楽曲だ!一部、アレサのダイジェストビデオなどでもこの歌の模様が映し出されていたが、高音でのパンチは貫禄以外の何にも代えがたい。1つのストーリーとして流れており、祈り深いです

Disc.2
1.「Precious Memories(尊きおもいで)」+
7分半にわたる、シリアスな雰囲気のあるスローテンポのゴスペル
2.「Climbing Higher Mountains(高き山に登らん)」*
お祭りのような、おどけたテンポ・リズムでブレイクダウンする楽曲。ミサにこういう曲があると、メッセージ性ばかりの楽曲で重過ぎる空気に、ひとつ風穴をあけてくれるよう
3.「Remarks by Reverend C.L. Franklin(C.L. フランクリン師の言葉)」+
有名牧師であるアレサの父が、ここでは言葉を述べます(要はインタールード的)
4.「God Will Take Care of You(神は汝を導きたもう)」*
9分近く、独特のテンポで進行…流れ的に、聴き落としがちな曲かも?!
5.「Wholy Holy」#
唯一シングルカットされた楽曲で、完全盤2CDを聴いてもらえれば分かると思うけど、これは完全に商業用にアレンジされている(完全盤はここまで美しくハープなんかは入ってないし、ヴォーカルもまとまりすぎていない)
6.「You'll Never Walk Alone(淋しくはないはず)」*
しっとりした中にも、アレサのヴォーカルの存在感はさすが
7.「Never Grow Old(生命は永遠に)」+
アレサが1957年にリリースしたアルバム『Never Grow Old』にも収録されていたナンバー、アルバムとしての流れで捉えた場合、素敵な終わり方になっている

1999年には、2種類の新ヴァージョンCDが発売に!1つは、約70分・全10曲に絞って1枚のCDに収めた『Gospel Greats』。もう1つは、未発表音源も多数収録・ライヴの模様をほぼ編集せずに2日分をフル収録した『Amazing Graze (The Complete Recordings)』なる2枚組(国内盤有り)もリリースされました!

後者は文句なしに、当時の臨場感を再現する素晴らしいものですが、当時の2枚組LPとして出されたものが、ステレオで聴く環境としてはうってつけかも。やはり、未だにアメリカにおける2枚組ゴスペルアルバムの中で、最も売れたのがアレサのこのLP…今でも2枚組CDでも入手できるので、是非ゴスペル・ソウル好きには一度は耳にしてもらいたいと思っています。

Amazing GraceAmazing Grace
アーティスト:Aretha Franklin
販売元:Atlantic
発売日:1990-10-17
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

Amazing Grace: The Complete Recordings
Amazing Grace: The Complete Recordings
クチコミを見る

Gospel Greats
Gospel Greats
クチコミを見る