0000010606アレサ・フランクリン8年振りのオリジナルアルバム(実際は約7年8ヶ月振り、全編新曲のホリディ作からは2年半振り)、R&B15位・POP54位を記録。最初のリリースアナウンスは2005年6月。実際、アレサは既に2003年『So Damn Happy』をもって23年在籍したArista Rocords を退社し、新たに自身の名を冠したAretha's Records を立ち上げていたものの、なかなか思うようには進まなかったみたいです。これまで、発売される・されると何度も情報が行きかったものの、昨年2月に先行試聴会を経て、この度初アナウンスから約6年の月日を経て完全オリジナルアルバムがWalmart Exclusive として全米のみでリリース(クリスマスアルバムはBorders Exclusive でした)。今後順次一般流通、ダウンロード販売なども行われるようです(ただし、国内発売予定は今のところなし)。

まずはタイトルについてですが、こちらも二転三転しました。『A Woman In Love』 『Aretha, Woman In Love』『A Woman Fallin' Out of Love』 『Aretha』『Aretha, A Woman Falling Out of Love』、、、そして結果A Woman Falling Out of Love
となりました。これにより、前作2003年『So Damn Happy』収録曲であるBurt Bacharach 作「Falling Out Of Love」と同名のタイトルを選んだことになるので・・・微妙かもしれませんが、本作に加え前述の曲も併せて聴くと愛に満ちた感覚尚一層と思います。

共演陣については、相当な情報交錯。Faith Hill, Dennis Edwards, Ali Oli Woodson, Smokey Robinson, Christina Aguilera, Dionne Warwick, Patti Labelle 等のレコーディングの話題がありましたが(アレサのアルバムへの参加でない場合も含む)、結果予定通りだったのはKaren Clark-Sheard のみで、その他にRonald Isley, 息子のEddie Franklin(悩み) が単独参加。

制作陣についても、最近ではR.Kelly が大きな話題となりましたが、見送られた模様。更には、Trey Taylor, Gordon Chumbers 等の新進気鋭のクリエイターの参加もなく、「Woman In Love」「「I Adore You」等のライヴでは披露されていた単独曲の収録も見送られました。この辺りは、次回のオリジナルアルバムに期待でしょうか。

アートワークについては、賛否両論でしょうね。アレサの激痩せ後の復活前の写真をふんだんに盛り込んでいるので・・・。一部写真などは、既にここ数年のアレサのライヴなどでもスクリーンに映し出されていたりしました。恋をしている女性というのを表している写真だけあって、アルバムを聴くとこのアートワークも少々納得できるのでは、と思っていますが。全体的な創りとしては、今までよりもチープ感は無かったです。むしろ、細かに気を配っている感じを受けたので、好感度高いです。曲順については毎度ですが、事前情報では少々異なっていましたが、今回下記の通りになっていました。

1. How Long I've Been Waiting written by Aretha Franklin
produced by Aretha Franklin
1stシングル、チャートアクションどころか、プロモCDSなどの存在も不明・・。1度だけテレビで披露されたショートヴァージョンも、アルバムヴァージョンの滑らかな感覚も味があって大好きになりました。しなやかで伸びやかで、こんな落ち着いたアルバムって、アリスタでの1980年作『Aretha』収録の「United Together」に近いものを感じました。2003年『So Damn Happy』でも同じくスムースなR&Bを感じ取れましたが、ここでは格段にアダコンソウルバラード一直線

2.Sweet Sixteen
written by Riley B. King and Joe Bihari
produced by Aretha Franklin
こんなソウルフルな曲が2曲目ってのも、メジャーレーベルではなかなか実現してなかったですね。アトランティック期でしか聴けなかったような、骨のあるゆったりソウル。B.B.King のカヴァーを取り上げたのは、やはりこのアルバムでのアレサの心情にある若さあってこそ。スローながら、気さくなオバチャン振りもしっかり発揮してて、クールに突き抜けちゃってます。アレサのライヴ参加最初だと、洗練された曲なんてほぼ披露されなくて、こういったソウルを好むアレサに違和感を覚えるかもしれないけど、こういったフィーリングこそがアレサに秘める伝統そのもの

3.This You Should Know
written by Aretha Franklin
produced by Aretha Franklin
これも1曲目に近いスムースさで溢れてるのと同時に、1980年代初期のArif Mardin とタッグを組んでた時代を思い出します。それと同時に2003年『So Damn Happy』の後半に怒涛の収録だったスロウに近い感覚。音は若干の新しさを交えつつ基本はオールディーズ。コーラスとの相性も忘れられないソウル期の円熟味という感じでしょうか

4. U Can't See Me
written and produced by Curtis Boone
アルバムの中でも、近年のR&Bフレイヴァーを取り入れつつ、低域をうまく活かしきった王道ナンバーに仕上がってます。リリックの口ずさみはアレサならではのテクニック。今のアレサだからこその刻み重厚。後半は、絶えずスキャットしまくり!!この余裕のビートに、余裕の語りまで。お気に入りです!

5.(Theme From) A Summer Place
lyrics by Mack Discant
music by Max Steiner
produced by Aretha Franklin
何かの映画のテーマでしょうか。ゆったり朝の目覚めを助けてくれるようなスタンダード。途中の語りは確かアメリカのアクター。そして曰くの1分34秒地点から7秒ほど、レコードが飛んだように音飛び発生。これは、いつか修正されるんでしょうが、このため出荷程度などの措置がとられ、やきもき。ラストの圧巻の高音、そこにゆったり語るアレサは完全に恋するフレーズ。1974年『With Everythig I Feel In Me』にも近い流れかな

6.The Way We Were
written by Alan Bergman, Marilyn Bergman and Marvin Hamlisch
produced and arranged by Marty Paich
スタンダード、今年のグラミー賞にもノミネートされたRon Isey 初のソロアルバム収録「You've Got A Friend」の共演のお返しか、今度はロンがアレサのアルバムに参加。仲いいじゃん!知ってたけど。前述の曲もそうだけど、完全無欠の感動というよりは、ロングタイムソウルヒストリーを描くような、ジーンと来ざるを得ないエッセンスに、ただただ浸るのみ

7.New Day
written Kecalf Franklin Cunningham and Norman West
produced by Brian Garrett and Joseph Hall
変則ビート、この曲が唯一のミディアムテンポのR&Bでしょうか。逆に、この曲が無かったら抑揚つかないくらいバラードアルバムという位置づけになってたかも。何度の高い曲に、まだまだ現役感を示すアレサが頼もしい限り。息子のケカルフが参加、更にはノーマン・ウェストも参加してるじゃん!

8.Put It Back Together Again
written by Norman West
ノーマン・ウェストが気合い入れて提供・プロデュースの、盛大なバラード。6分超、ジャズ調でもあるけど、中盤の高音部が続く箇所を聴くと、まだまだ健在ぶりを感じれて嬉しい限り!

9.Faithful (ft. Karen Clark-Sheard)
produced by Sanchez G. Harley (co-produced by Jacqui Whittman)
直球ゴスペル曲をアルバムで披露するのは、かれこれ何年振りだろう。アレサの伝記映画の出演も噂されているカレンとの共演、今のパワーからすると完全にアレサに謙遜する感じの出来かと思いきや、なかなか丁度良いタッグとなってました。アレサのパートが多いけど、やっぱ威圧なのかな、アレサの高音が相当勝った出来栄えに。たぶん大音量で、教会風味で聴いたら、感動ひっきりなしと思います。クワイアも多く従え、アレサの真髄ゴスペル、それも新曲で久々に聴けて嬉しさいっぱい

10.His Eye Is on the Sparrow (performed by Eddie Franklin)
written by Charles H. Gabriel and Civilla H. Martin
produced by Aretha Franklin
映画"天使にラヴソングを2"でLauryn Hill が歌ったことでも日本では有名かな。ゴスペルライヴアルバムを除くと、アレサのアルバム史上初めて他人が1曲丸々歌うという展開に、曲飛ばしの方もいるのでは?それでも、アレサの息子エディーは、前作のクリスマスアルバム『This Christmas Aretha』でアレサと共演している程、アレサごり押し。ちょっとの揺れは前にも感じていたけど、後半のファルセット超伸ばしには驚異的な味を覚えるでしょうね。既に50歳以上のエディー、第1子はこんなにもう大きいのですが、アレサが大事にする息子さんたちがこうやってアレサのアルバムに登場することで、アレサのDNAをちょっとでも汲みとれればそれでいいかな。たまに聴ければいいかな(爆

11.When Two Become One
written by Curtis Boone
4曲目にもあったけど、カーティス・ボーンのプロデュースは、 どれも落ち着いた感と、アレサの新たな面を引き出して好感触。低域をうまく保ち、『A Rose Is Still A Rose』収録の「The Woman」のように、しっとり聴かせてくれるナイススロウなエンディング

<Bonus Track>
12.My Country 'Tis of Thee
lyrics by Samuel Francis Smith, music from Thesaurus Musicus, 1744
arrangement by Aretha Franklin and H.B. Barnum
かれこれ2年以上前になりますが、オバマ大統領就任式典で歌われた曲。シングルヴァージョンとしてDL限定リリースされていた曲をボートラとして収録。確かにアルバムの流れと異なるけど、こうやって大事な曲をしっかり収録してくれたのは、アレサ自身のレーベルからの仕事ならでは。これはアレサの歴史においても、名曲というよりも単に重要曲。アメリカの偉大さ、誇らしさ、それを支えてきた黒人の歴史も汲みとれて、感慨深すぎます

本日は、アレサの半年振りの復帰公演となっていた日。実際には前倒しで別途シカゴ公演が5月19日に行われたため、そんな記念の日ではなくなってしまってますが、僕にとってはアレサの新作をようやく聴ける素晴らしき良き日です。恋の歌だけで捉えると苦手だけど、ソウルの真髄は随所に溢れてます。アレサのオリジナルアルバムの中では最長の61分の収録、なかなかのボリューム!!まだまだアレサのやりたい音楽を聴きたいので、みなさん是非、日本からも応援してください!!

Walmart での発売は2011年5月3日、iTunesAmazon 等でのダウンロード販売開始は6月7日予定。あとは各CD問屋が頑張って、国内ディスクユニオンは5月11日には早くも取り扱い開始!アマゾンのCD一般流通は5月31日、HMVは6月7日・・・各社の対応が異なりますが、一般流通においてWalmart からCDを取り寄せているケースにおいては、5曲目の音飛びの問題が解消されているか分からないので要注意。実際、限定販売をしているWalmart でさえ発売を中止している事態のため、アレサの新作がチャート圏外へと落ちてしまっています(2011年5月28日現在)。まずは、音飛びOKな方は好きなところでゲットしてください。音飛びが解消されたものを重要視する場合はダウンロード販売、もしくは続報をお待ちください。

※下記YouTube は、「How Long I've Been Waiting / Respect」のライヴ、「Sweet Sixteen」のライヴ、「New Day」のCD音源、「Faithful」のCD音源

   

<過去レビュー>
2009年 My Country 'Tis of Thee
2011年 遂に新作の収録内容決定!

Woman Falling Out of Love
アーティスト:Aretha Franklin
販売元:Walmart
(2011-05-31)
販売元:Amazon.co.jp
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