51JyJQ1zRLL__SL160_アンソニー・ハミルトン、3年振りのメジャー7作目はクリスマス作でR&B22位を記録。今年、R&Bシンガーによるクリスマス作が少ないこともあって、中でも注目となっています。ネオソウルを究めてきた彼が、こういうテーマで音を嗜んでいくのは意表を付かれた気も。一方で、元気がないR&Bにおいて、パンチを与えてくれるかもしれない役割になるぞと思い、自分は楽しみにしていた作品であります。そんなわけで、今年一発目のクリスマスアルバムレビュー、スタート!

1. It's Christmas
懐かしい音色混じり、優しくも前へポジティブに進んでいくアンソニー書き下ろし、クリスマス。愉快で、クールで、音も随所締まっていて、味わい深い


2. Spend Christmas with You
ベタにクリスマスのハッピーステップ、ご機嫌なサウンドでアンソニーのウキウキ躍動もバシバシと。中域までで彼の個性はバッチリ構えられててクール
3. Santa Claus Goes Straight to the Ghetto
James Brown サンプリング?1996年Christmas on Death Row 収録・ Snoop Dogg ft. Daz Dillinger, Nate Dogg, Tray Deee, Bad Azz 歌唱のカヴァーのようで(こちらはIssac Hayes "Do Your Thing サンプリングだったよう)、でも彼なりにゲトー混ぜ、ゆったりと新解釈
4. Little Drummer Boy (Interlude)
1分半、次に繋がるべく穏やかに抑えたインタールード。ブルースのように、非常に重め、ダーク・アコースティックって感じで
5. Little Drummer Boy
Donny Hathaway カヴァー、嬉しい収録。全く曲調は変わって、愉快にファンクに。古くはゴーゴーな音も入ったりして、クリスマスサウンドの概念を覆すかのようだし
6. Home for the Holidays (ft. Gavin DeGraw)
タイトル曲、風景は変わって、トーン抑え目のバラード。でも明るみや温かさ、朗らかさが実に清廉。彼が紡ぐ音や声にはエモーショナルがいっぱい、John Legend と異なるストレートさがあるな
7. Tis the Season
ファルセットが、ほんわかする。浮遊、どこか田舎くさい感じで、ふくよかな女性の表現に近いような声で攻め立て。でも、この繰り返しがネオソウル伝承への光
8. That Do the Lonely Do at Christmas
これなんて、60年代ソウルの柔らかさ、人間臭さがドカンと詰まってるなぁ。前曲のようなファルセットも多彩に、心の震えなんかが絶妙に表現
9. Coming Home
堂々と力が溢れる、漲るというか、決して派手では無く、涼しげに進行するのに決意が強い。クリスマスに聴くと、ホロっとするような感情の波が素晴らしい、音波に色々詰まってるぞ
10. Away in a Manger (Interlude)
遠吠えのような40秒インタールード、独特の世界観が読める
11. Away in a Manger(ft. ZZ Ward)
カントリー・ブルースのように、これをクリスマスとして消化していくんだから変化球すぎる。清らかに、強く、ちょっと乱れたようにツンと女性デュエット、度数高い酒を横に即興なイメージ。だけどコーラスあったり、仕掛けは壮大だったり
12. Please Come Home for Christmas
王道なアレンジで、淡々と歌いソウルシンガーとしての器もチラホラ。ただの歌唱でなく、温かさが籠ってて愛着
13. The Christmas Song (ft. Chaka Khan)
注目のデュエット、チャカ・カーン登場。カヴァーするはクリスマス王道、下手したらアルバムの流れが壊れる力有る彼女も、ここでは崩しながら歌ってジャジーに。アンソニーは裏でガヤ、だいぶ解釈を変えてきた流れで自分はじわじわ好きになれそう


14. Spirit of Love
ラストは光に向かって実直に戦うファイターのよう、なんだろ、これだけはクリスマスってよりも、ささやかに熱い血潮を感じるようなミディアムスロウバラード

インタールード2曲含む計14曲・47分半、アンソニーならではのクリスマスアルバムに仕上がっていて満足。直球もあれば変化球も、客演に頼り過ぎず自身の魅力で色々と抑揚をつけているところが好感。さらにネオソウル、ソウル、ゴーゴー、ファンク、カントリーブルースなど、曲調多種あれどこだわった流れでアルバムワンパッケージ成功。ただ、その割に売れてなさそう。ちょっと、R&Bクリスマスの未来はちょっと鈍詰まりかなー。

<過去レビュー>
1996年 XTC
2003年 Comin' From Where I'm From
2005年 Ain't Nobody Worrin'
2005年 Soulife
2008年 The Point Of It All
2011年 Back To Love

Home For The Holidays
Anthony Hamilton
RCA Records Label
2014-10-21