41F8RHjk2kL__SL160_アレサがアトランティックレコードにて大ヒット連発の中、教会に戻り行われたライヴの模様を纏めたアルバムAmazing Grace(邦題、至上の愛)。本作はアレサのアルバムの中でも最多売上を記録しただけでなく、今もなおゴスペル実況盤としては売上・記録など破られてないようです。この時の映像がしっかり撮られていたようで(一部はこれまでもバイオなどを纏めた映像で観れましたが)、2010年Sydney Pollack 監督による映画として公開されるはずがお蔵入り、なにせアレサ側への了解が済んで無い状態(アレサは自伝映画の制作を進めていたことも原因か)、裁判沙汰になってましたが、その後シドニー・ポラックが逝去したこともあるのか、2015年秋カナダの映画祭で公開されることになりました。既に発表されているTrailer は派手なシーンではないものの、期待が高まります、だいぶ前にオリジナルアルバムはレビュー済でしたが、今回改めて1999年にリリースされた完全盤2CD Complete Recordings をレビューします。既に完全盤の選曲を観て分かるのは演出がそれぞれ異なること、あとはオリジナルではだいぶ凝縮されてましたが、説法なども多く、教会の雰囲気そのまま感じ取ることができ、新鮮な感覚に陥ります。

 

<Disc.1> 1972/1/13 Live at New Temple Missionary Baptist Church (LA)
1. Organ Introduction (On Our Way)
オルガンイントロ1分半、始まりの知らせというところでしょうか
2. Opening Remarks by Reverend James Cleveland
ジェームス・クリーヴランド氏の説法でアレサのライヴへの期待想起へ
3. On Our Way Southern California Community Choir
2分程、ジェームスに加えクワイアによる歌声でさらに躍動への期待
4. Aretha's Introduction
クワイアの歌が終わると説法に戻り、ようやく出だしから7分くらいしてからのアレサの登場になります。説法が続くなぁと
5. Wholy Holy
本作から唯一シングルカットされた曲だけど、そちらはスタジオ新録らしく、ここでは異なる臨場感で聴ける味わい。第一声に先ず拍手、華麗な音は含まれず、教会の空間ならではの繋ぎ、でもコーラスはアトランティック名門感はあるな。決してMarvin Gaye カヴァーなんて思いだしにくく、壮大なゴスペルとして昇華しちゃってるから勇ましい
6. You'll Never Walk Alone
壮大な部分あれど、神妙に歌うアレサにじっくり聴き入ってしまう。乗ってくるとアレサは高域をガツンと、魂が揺さぶられる…この階段の急さが凄いんだよね
7. What A Friend We Have In Jesus
ライヴの流れを考えた、若干ほのぼの、ゆったりと進行。アレサはこういう時は下手に叫んだりせずに程良い音域でキープするのが味。中域でがしっと聴ける感じで
8. Precious Memories with Rev. James Cleveland
最初は安定の名ゴスペル、クワイアと堂々たる流れに。途中からジェームス加わりアドリブ感のある展開、でもお後はなかなか、9分の大判
9. How I Got Over
これが現在トレイラーでも流れている曲、勢いあって聴いてて気持ち良い、絶叫とかはないけどサックリ聴ける。でもオリジナルは何気に5分半もある、やっぱり当時編集を手掛けたArif Mardin の手腕が凄いなぁ、違和感なくライヴ編集、今から43年前の術として
10. Precious Lord, Take My Hand / You've Got A Friend
メドレー、オリジナルよりも3分も長かったようで。前者はゴスペルとしてありだけど、後者はアレサ曲"A Natural Woman" 作者Carole King の世俗音楽を混ぜてくるあたり、ライヴ盤を意識しての選曲と言うことが分かるのと同時に、世俗とゴスペルを行き交う時代到来訪れを告げるようでもあり、なんか感慨深く
11. Climbing Higher Mountains
オリジナルとほぼ編集が無いほのぼの3分曲、さっくりしてて7曲目にも近い魅力かな
12. Amazing Grace
ディスク1 でのみ聴ける本題曲、オリジナルでも相当な威力として11分近くあったけど、実際は16分超。これが編集されても凄い威力だったわけだから、隅々まで聴いてこそ驚くアレサのソウル、そしてルーツ、そして彼女に備わった実力
13. My Sweet Lord (Instrumental Version)
聴き応えの後にアレサは退場?男性説法あれど、インストでうきうき気持ち良い余韻2分
14. Give Yourself To Jesus
アレサが再登場、どんな位置づけだろう。5分超、実はこの曲も5曲目のB面として収められたシングルとしてシングルヴァージョンも存在するんだよね。ひんやりした空間、そこに息吹がじっとり


<Disc.2> 1972/1/14 Live at New Temple Missionary Baptist Church (LA)
1. Organ Introduction (On Our Way) / Opening Remarks by Ken Lupper & Rev. James Cleveland
オルガンイントロ、説法と併せて2分半
2. On Our Way
アレサを迎えるにボルテージを上げるクワイア、意気が合ってない?そこが気になる・・・
3. Aretha's Introduction
説法3分、昨日以上にアレサを迎えるに時間がかかり実に8分半後―
4. What A Friend We Have In Jesus
本日はこの曲からスタート、ちょいウキな気持ちで。連日ライヴでもアレサの喉に狂いなし、流石に鍛えられてる
5. Wholy Holy
今回のライヴでは特にメインとして掲げられる曲、流石シングル。出だしは説法付き。コーラスの昇天、アレサは幾分離れのユッタリした感じでの歌唱
6. Climbing Higher Mountains
これも連日、ただしライヴならではというか昨日は3分だったのに、ここでは5分半。リハとかじゃないよね、その場の雰囲気で造られていく見事な結晶
7. God Will Take Care Of You
じっくり歌われ、演奏にも品が上がっているようで。9分に亘る黒さ、でもアレサに及ぶと黒さだけでない繊細さもあるんだよね
8. Old Landmark
定番ゴスペル、とにかく楽しい曲。これは一般的にも知られてきているんじゃないかな。でも、張り裂ける感じではなく、粛々と3分
9. Mary, Don't You Weep
オリジナル1枚目の1曲目に配されていた曲が、実際は此処で披露されていた面白さ。なので、各盤でこの曲だったり流れが凄く変わってくるなぁと。自分はゾクゾク感を覚えてるだけに、この曲をこのタイミングで聴くことで、急にヒンヤリ
10. Never Grow Old
この日メイン曲をやっていない代わりに唄いあげるゴスペルは、アレサが1957年のChess インディLPにも収録された曲、さらにアルバムタイトルにもなった曲、改めてルーツに立ち返り実に丁寧に。負けじの15分半と言う、こちらのディスクのインパクトに繋ぐ
11. Remarks by Reverend C L. Franklin
とは言え本盤のほうがインパクトは薄いのかな、説法が8分近くあったり、でも堪能すべくはアレサの父C.L. の声が聴けること
12. Precious Memories
ほぼラストなんだけど、昨日よりも探る感じで、まだまだ終盤なのに緊張あれ、じっくりゴスペルの素敵さを痛感
13. My Sweet Lord (Instrumental Version)
これは無理やりかな、40秒のインスト、フェードアウトなので、完全盤にしようとすると尺が足りないとかだろうなぁ、でも全容は分かったから良い良い

オリジナル2LP(2CD)盤は14曲・86分のボリュームでしたが、今回は約13曲・70分増えてCDのみのリリースで27曲・156分の大増量ヴァージョン。歴史的なゴスペル作品、特にゴスペルを下地にしたR&B・ソウルシンガーにとっても本作は相当なインパクトを持ってるし、アレサのキャリアとしてもこの挟みは素晴らしい選択だったなぁと。長いだけあって、何度聴いても飽きない流れとして受け取れそうです。

Amazing Grace: The Complete Recordings
Aretha Franklin
Atlantic / Wea
1999-05-11

至上の愛 〜チャーチ・コンサート 〜<完全版>
アレサ・フランクリン
イーストウエスト・ジャパン
1999-06-23