718WLgELK3L__SL1204_クリス・ブラウン、前作から1年10ヶ月振りとなる8作目、R&B1位・POP3位を記録。今回は特にレビューを悩みましたが(笑)、ハロウィーンに合わせてリリースとなった2枚組!これまでプリンスの3枚組CDをレビューするのも、3回に分けたくらいで、今じゃ4枚組をレビューするのも、もう清水の舞台を飛び降りる覚悟なのに、2枚組なんていう軽薄な言葉に見えて、ボリュームはまるで4枚組(最低でも45曲、ボートラとか数え出したらキリがない作品のようで、リリース45日後に再発されたデラックス盤はクリスマス意識で57曲に増えてるし)。でも、いきます。だって、如何せん凄い作品のようにも感じるので。

<Disc.1>
1. Lost & Found
徐々に鐘を鳴らすように、じわじわと響き伝う空間。気迫よりも、オープニングならではの準備運動、ストレッチ。これだけ長編の作品あって、クリスヴォーカルの気迫あれ、程よい位置にてキープ
2. Privacy
3rdシングル、R&B26位・POP62位を記録。結構アグレッシヴに突っ張った感じ、クリス自身もラップを豪快に、ちょいワルに噛ませてくるし、でもヴォーカルは健やかだったり、裏腹


3. Juicy Booty (ft. Jhene Aiko & R. Kelly)
プロモシングル。洒落たステップR&B、アイコやケリさん参加で、かなりクールで粋な仕上がり。若手っぽさよりも重鎮の力を借りて、なんかセクシーさなんかも突出
4. Questions
5thシングル、R&B32位・POP78位を記録。シンプルに2分程の曲、これがシングルと言うのも斬新(少し前にJason Derulo でもあったけど)、涼しげにアッケラカンと、特徴薄めなんだけど、しんなり


5. Heartbreak On A Full Moon
この時点でタイトル曲、セクシーな全体。コロンとした感触、コーラスがクレッシェンド、半透明な輝きというか、クリスの繊細なヴォーカル術も魅力
6. Roses
はちゃけた感じで多方面ヴォーカルが干渉し合ってて、解するに難しくもクリスのヴォーカルは基軸としてキープされ心地よく
7. Confidence
かなり先駆的、知的に進行する四つ打ち気味。ただ、ビートの強弱は結構あるので、そういうのを楽しんでたらあっちゅー間に終了
8. Rock Your Body
結構典型的な進行かな、ただ短い中に歌とラップと、結構濃縮に詰め込んできて、高域のサンンプリングヴォオーカルみたいなのが延々宙を浮くような展開
9. Tempo
6thシングル予定。クリスらしい、度量で押し通すというか、音自体は無難な状況なんだけど、彼の表現で虜にするような息抜く暇なしの進行


10.Handle It (ft. Dej Loaf & Lil Yachty)
可愛らしいヴォーカルと張り合いながら、同化する部分もあれ、声の応酬という感じで、ミディアム展開、声の重なりの冒険
11. Sip
影があるような、悲壮や暗さを抱え持つようなミディアムスロー。クリス自身のヴォーカルの引き出しは多く、色々な絡めで曲の印象は深層なものに
12. Everybody Knows
出だしから、シンセの音が耳を惹きつけ、ヴォーカルも重ねたり、急に組み込んだり、ラップも入れて、色々と手法を試しまくり
13. To My Bed
プロモシングル、R&B47位を記録。Usher "Nice & Slow" サンプリング、遠吠えのような、どこかで微妙に音が鳴っている状態というか、不鮮明維持で独特な消化不良
14. Hope You Do
Donell Jones "Where I Wanna Be" サンプリング、だいぶウネウネしまくってて、暗めというか、声も音もシリアスの渦
15. This Ain't
だいぶ、シレーっと鎮まる感覚。後半ならではの、結構落ち込み度は大きいかな。この辺り、どう聴き込めるか微妙ゾーン突入
16. Pull Up
しっぽり続き、哀愁あれ、寂しさの余韻なヴォーカル。どこか歌謡曲のようでラップの低空飛行のような。ただ、この調子が続くと重いかも
17. Party (ft. Gucci Mane & Usher)
2ndシングル、R&B14位・POP40位を記録。突破口に成り得るか、メンツ的には豪華なんだけど曲調は大きく変わるわけでは無いので微妙な域かも。ただシングルヒットという効果でアルバムを聴く人にとっては、かなり転換できるタイミングかも


18. Sensei (ft. A1)
英語でsensei って恩師とか、でもクラシカルな音をループさせながら、リスペクト感よりも懐古感が感じられるような曲、なんか日本人としてはちょい違和感を持つタイトル連呼
19. Summer Breeze
涼しさは薄いかな。単にラップな感じで、結構クリスってこのパターン多いなぁと、どの曲もメッセージ重めに作ったりするから、期待と裏腹着地って多い
20. No Exit
だいぶ演奏的にも明るさを取り戻すんだけど、それなりに。そこにヴォーカルを徐々に躍動、リリックも多め。聴き易くなってくるかな
21. Pills & Automobiles (ft. Yo Gotti, A Boogie wit da Hoodie & Kodak Black)
4thシングル、R&B16位・POP46位を記録。タイプ異なれ、インパクトある布陣にて、声の鳴りも高めで、だいぶ復調できている気も。クリスもこの長さをよく耐えてる感じもするけど、聴き手も飽きたらオシマイなので、ま、だいぶ許容位置に来た気がします


22. Hurt The Same
ディスク1ラストは、しっぽり感は否めずとも、結構気合の入ったラップ部多めに、客演頼らずここまで自身でやりくりしまくるのは好感高過ぎ

<Disc.2>
1. I Love Her
ディスク1よりも、ニュートラルに入って、でも彼らしいじんわり鳴らすような第2オープニング、何が始まるか予見が難しく
2. You Like
連なる展開、まだまだシッポリ感たっぷり。掴みは薄くも、色々なパターンにて似た展開って印象かな
3. Nowhere
お、だいぶヒネって来たかも。放たれるような音とメロディの旨み。佇みつつ、場面転換効果に絶妙
4. Other N***as
健やかな印象あれ、だいぶ鍛錬に引き延ばし。声の明るみが救い、ポップさは無いんだけど、キレ味はなかなか
5. Tough Love
結構好きな感じ、80年代ニュージャックスウィング意識で、その中を泳ぐように歌が挿入され、なんかセクシーだなぁと
6. Paradise
天国な感じはなくて、それよりは、その条件付けみたいな曲かな。浮遊して、だいぶ1.5次元的に現実との行き交いにも近いような幻想
7. Covered In You
熱烈にも、どこかに埋まっちゃうような感じで、その一方で高域のヴォーカルを突出させたり、かなり中毒性あるバラードR&Bって感じかな
8. Even
まだまだ雲行き怪しい感じ、多分2枚組とかじゃないと、このディスク2の暗さはなかなか作品化が難しかったのかもと想起できてきた。彼の闇の部分の音楽化、納得
9. High End (ft. Future & Young Thug)
9曲目に来てようやくフィーチャー、よくぞ一人で耐えたな。でも、それでもアッパーに暗くなる仕上がり、とことんだな
10. On Me
まだまだ個別に攻めまくり、ただ、曲の展開には美世界を感じる。ワンパターン多めに聴こえるのは、ディスク2の特性かも
11. Tell Me What To Do
泣きの出だし、ピアノと共に少しは情景が変る、こういう変化がないと苦しいけど、10曲目からはだいぶ面白い仕上がり
12. Frustrated
プロモシングル。涼しげに進行しつつも、さらっとした感触のコーラス優位なのに、なんか粘っこさも残る質感微妙
13. Enemy
まだまだ続く泥臭さ、でも本人はデジタルに、近未来に進んでるようなんだけど、えげつなく人間味が大きい
14. If You're Down
放つ音あれ、だいぶ開放感が声から漲って、コーラスはだいぶ陰な印象もあるんだけど、これまでよりはだいぶ集約されたエナジーを感じるなぁと
15. Bite My Tongue
なんかオリエンタル言えど、どっちつかず。なんだか、粛々とした展開、後半、飽きさせない展開分かれど曲としては理解がむずくなってきた
16. Run Away
だいぶ鎮まる孤独、切なさ、ここまでメッセージを入れ込みまくってくると、さすがにもうお腹いっぱい。ヴォーカルもまだまだ張り裂けてるし
17. This Way
ポップにバウンスも、疲れてきました。レビューって、最後までパワーないと、どこまでも良いテンションで書けないと判明
18. Yellow Tape
いよいよ到達の40曲目で一旦はラスト、でもフィナーレ感よりも、ストーリーをいよいよ閉じる暗さ、叩きのめすラップにて

<Bonus>
19. Reddi Wip
あとちょいなんで、ボートラも。音の広がり、徐々に伝うヴォーカルは味。本編は後半特に暗すぎた、なんか心機一転聴けてる
20. Hangover
優しい歌い方に、軽やかさ。若さあれ、結構肩荷チカラを落として歌われ、涼しさの再来
21. Emotions
初期の音や声の紡ぎを感じる。なんか、曲も似た感じが多すぎると、これっていう感想がなくなってくる…
22. Only 4 Me (ft. Ty Dolla Sign & Verse Simmonds)
音の汲み方が異なる、客演も最多で注目度は高め。裏で鳴らす音含め、単独で切梁すればなかなか聴きどころかも
23. Grass Ain't Greener
1stシングル、R&B15位・POP71位を記録。ラストは先行シングルをオマケ状態に、だいぶヒット性のない暗さ、こういうのはプロモーションあってこそ中ヒットってところなんでしょうか


実に2枚組・40曲、136分弱(前半22曲・79分、後半18曲・57分にボートラ5曲・18分追加で75分といったところ)。ボートラ付でカウントすると計45曲で159分弱(実に2時間40分)。更に更に、Deluxe Edition (Cuffing Season: 12 Days of Christmas)は12曲・38分追加と、もう記録づくし。こんな音をしっかり聴いてもらえない時代に、よくもここまでパッケージしたなぁと。ゆえに才能はジワジワ伝う!ただ、これはよっぽどのファンじゃないと、聴き込めないや。凄いこと仕掛けてきたなぁと。

<過去レビュー>
2007年 Exclusive
2009年 Graffiti
2009年 Graffiti (Deluxe Edition)
2011年 F.A.M.E.
2012年 Fortune
2012年 Don't Wake Me Up
2014年 X (Japanese Edition)
2015年 Fan of a Fan: The Album & Tyga
2015年 Royalty
2016年 Back To Sleep (Remixes)

Heartbreak on a Full Moon
Chris Brown
RCA
2017-11-03