ルーサーがセッションシンガーとして参加している、ソロデビュー前の作品。グループ“Luther”として1976年『Luther』・1977年『This Close To You』の2作品で確実に名声を高めた彼が“フィーチャリング・アーティスト”としてアルバムに大々的に迎えられている本作『New York City Band』。実際、まったくヒットには結びつかなかったが、当時のニューヨークサウンドが「これでもか!」というくらいに溢れている。

ルーサー自身は、全曲でコーラス参加。そして8曲中、2曲目「Got To Have Your Body」、4曲目「Be Diddley」のみでリードヴォーカルを担当。いずれの曲でも感じ取れるのは、グループ“ルーサー”で感じられたような、ファンクサウンド。彼のヴォーカルにスウィートさは無く、曲に食らいついて歌っており、まだまだソロとしての芽生えは感じ取りにくい。制作年は近いという理由で、1981年のソロデビュー作『Never Too Much』を期待して聴くとちょっとガッカリしてしまうかも。それに、その他の曲では彼の声を何とか拾える程度なので、普通にファンクアルバムとして楽しむべし。

本作は、めでたく2007年3月に初CD化。1970年代のルーサーのリードヴォーカル音源はほとんどCD化されていないので、そういった意味では、ファンとしては拝める作品。他にCD化されているルーサーのソロワークス(と言える曲)は、1991年『May Christmas Bring You Happiness / At Christmas Time』というA面曲のリミックスも2曲追加収録されたCDシングルくらいか(今では入手困難なため、コンピレーションCD『Soul Christmas』が便利)。グループ“Luther”のLPが、権利上いつまでたってもCD化は期待できない状態なので、このCDはそんなモヤモヤを少しだけ解いてくれる。


※以下、ディスクユニオンのレビューより
1979年、ジョン・トラボルタの実兄であるジョーイの主演映画「Sunnyside」のため、ブロードウェイの人気コンポーザーで、ホィットニー、スティービー、ナタリー・コール、ダイアナ・ロスなどのプロデュースを手掛けた経験もあるHAROLD WHEELERが、一流セッションミュージシャンを集め、"New York City Band"名義で製作したサウンドトラック・アルバム。NYで最高のセッション・シンガーの一人であったLUTHER VANDROSSがコーラス監督として全面参加した幻の1枚が世界初CD化!

New York City Band